太陽の光があれば少量の水で元気に成長するサボテン。手入れが簡単なため、お家で育てている人も多いですよね。実は、そんなサボテンが活用方法次第で環境問題を解決する未来の素材として注目されていることをご存知でしょうか?天然レザーである本革は、動物保護の観点から否定的な意見があったり、製造の際のなめしによる環境汚染への懸念や水を大量に使うという点などから問題視されています。そこで近年、植物由来のヴィーガンレザーへの注目が集まっています。今回はその一つである、サボテンからできたレザーについてご紹介したいと思います。この記事を読んで、サボテンレザーについて少しでも知っていただけると嬉しいです。
サボテンレザーとは?
サボテンレザーとは、その名の通りサボテンから製造されたヴィーガンレザーです。世界でも有数のサボテンが生息する国の一つであるメキシコで生まれました。サボテンレザーは手触りが非常に柔らかく、ファッション製品、家具、さらには自動車のパーツなど、様々な製品開発に適しています。また、レザー表面の樹脂には、有害な化学物質であるフタル酸エステルや、PVC(ポリ塩化ビニル)を使用せず、水の使用量も比較的少なく、30%ほどのオーガニック成分をPU(ウレタン)樹脂と合成しているため、従来のレザーに変わる環境負荷の少ないバイオレザーとして今注目を集めています。
サボテンレザーができるまで
サボテンレザーはメキシコの起業家、エイドリアンとマルテによって開発されました。
二人はもともと家具や自動車、ファッション業界等で働いており、その中でこれらの産業が及ぼす環境汚染の問題を深刻に感じていました。その環境問題を改善したいという思いから2人は会社を立ち上げ、サボテンレザーの開発を始めました。およそ2年間の開発の末、サボテンレザーが完成し、「Dessert(デザート)」と名付けられました。2019年7月に発売を開始し、同年イタリア・ミラノで行われた展示会にて高い評価を受け、2020年にモナコ行われたモンテカルロファッションウィークでは「世界初のサボテンヴィーガンレザー」として受賞するなど、世界でも大きく注目される素材となりました。
サボテンからレザーになる製造工程
植物であるサボテンからどのように素材であるレザーに生まれ変わるのでしょうか?まず、原料であるウチワサボテンの成熟した葉を収穫し、機械ですり潰します。その後、適切な湿度レベルに達するまで3日間太陽の下で乾燥させます。この工程でオーブンやガスなどの追加のエネルギーを使わないことも評価のポイントとなっています。その後、粉末状に加工し、独自のオーガニック薬品での処理や独自の染色技術を施し、レザーへと生まれ変わります。
サボテンレザーの特徴
サボテンレザーの特徴の一つが、その耐久性です。サボテン成分の強力な分子が結合することで、摩擦や伸縮などに耐えうるることができます。
また、柔軟性と通気性にも優れており、手触りもよいため、使い心地の面でも心配ありません。水分や紫外線にも強く、お手入れが簡単なところも嬉しいポイントです。さらに色味や厚さなどの高度なカスタマイズも可能で、本革に見劣りしない見た目になっています。
2019年に開催された世界的なレザーフェアでは、サボテンレザーのコンセプトと共に、その質感も高い評価を受けています。部分的に生分解性のため環境負荷も小さく、オーガニック製品として認定も受けています。
サボテンレザーと環境問題
サボテンレザーは環境問題への貢献度の高さに注目が集まっています。従来の本革は製造過程での二酸化炭素の排出量が問題視されていますが、サボテンレザーでは二酸化炭素の排出量を80パーセント削減することができます。他にも、サボテンレザー製造時に残ってしまったサボテンは食品として販売されているため、製造の際にゴミが出ることはありません。そのため、サボテンレザーはヴィーガンレザーの中でも最も環境汚染から遠い素材であると言われています。
サボテンレザーを使用した商品開発
では次に、サボテンレザーを利用した国内のブランドをご紹介します。
スニーカー
日本発のヴィーガンブランド「GrandeurPapa」では、サボテンレザーを使用したスニーカーの開発に取り組んでいます。撥水性があり汚れがつきにくい点が魅力的です。一般的な発売はまだされていませんが、今後の動向に注目が集まっています。
トートバック
サステナブルな素材を使ってジェンダーフリーなアイテムを作るブランド「offsait」では、サボテンレザーを用いたトートバックのクラウドファンディングに挑戦し、見事に成功さています。
まとめ
サボテンレザーについて、少しでも知っていただけましたでしょうか?雨水と土のミネラルだけで育つため生育が安定したサボテンから作られるレザーは持続可能な素材の一つだと言えます。また、他のヴィーガンレザーよりも長持ちするという特徴を活かし、これからどのように商品展開されていくか、とても楽しみな素材の一つですね。